慰謝料請求(内容証明郵便)を無視・拒否したらどうなる?

最終更新日:2025年01月10日

 不倫慰謝料請求の内容証明郵便は、相手の「慰謝料を請求します」という主張を知らせるためのものであり、すぐに請求書の内容通りに金銭を支払う義務が発生するわけではありません。

 しかし、内容証明郵便を無視・放置すると、相手方から交渉を放棄したとみなされ、訴訟に発展するなど、後々大きなトラブルになる可能性があります。

 慰謝料請求の内容証明が届いたら、一度内容をしっかり確認して対処する必要があります。

 今回は、不倫慰謝料請求の内容証明郵便への正しい対応方法をお伝えします。

1 慰謝料請求における内容証明郵便の意味

 「そもそも内容証明郵便って何?」という疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

 通常の郵便と内容証明郵便とでは、一体何が違うのでしょうか。

 

⑴ 内容証明郵便とは

 内容証明郵便は、郵便物の差出人と日付、宛先、内容を日本郵便が証明してくれる書類をさします。

 受け取った日付もしっかりと証明されます。

 誰かに対し慰謝料請求などをする場合に、「この日付で、私の主張を相手にしっかりと届けました」と裁判などで証明するために用いられます。

 このように説明すると、「内容も絶対正しい」と勘違いされる方がいますが、内容の正しさは関係ありません。

 あくまでも書かれている内容を相手に通知したということについて、後日証明することを機能とするものです。

 

⑵ 内容証明郵便の効果

 上で説明したように、内容証明郵便は、相手に内容を通知したこと・日付などを証明するだけのものです。

 「あなたは既婚者と不倫行為を行ったため、300万円の慰謝料を支払ってください」と書かれていても、実際に内容を丸呑みしてすぐに全額を支払う必要はありません。

 内容証明郵便の効果としては、まず、今後の訴訟に向けた第一歩という意味合いがあります。

 仮に応じない場合は、内容証明郵便に書いた通りの法的手続きを実行されることになるでしょう。

 特に時効が近い場合、裁判でもこの時点において請求をしたという証拠として利用できます。

 次に、相手にプレッシャーを与えるという効果です。

 内容証明郵便がいきなり届くと、通常は誰でも困惑します。

 また、慰謝料に関する内容が書かれていると、どう対応しようか不安になる方がほとんどでしょう。

 実際、口頭で「慰謝料を請求します」と言われるよりも、文書として受け取る方が、相手の本気度が伝わってきませんか?

 特に弁護士名の内容証明郵便を受け取った方は、「相手が本気で慰謝料請求をしている」と考えるべきなのです。

2 不倫慰謝料請求を無視・拒否するとどうなるか

 上記のような効果がある内容証明郵便は、できれば受け取りたくないと考える方もいらっしゃると思います。

 このような場合、拒否をすれば受け取らずに済むのでしょうか?

 受取拒否や無視した場合はどうなるのでしょうか?

 

⑴ 郵便の受け取り拒否

 まず、いきなり届いた内容証明郵便の受取を拒否すること自体は可能です。

 郵便局の配達員が手渡しで受け渡しすることになりますが、「受け取らない」と言えば無理に渡されることはありません。

 この場合は、日付と共に受け取りを拒否した事実がメモとして書かれ、送付した相手もそれを確認することができます。

 居留守を使うケースもありますが、この場合は一度持ち帰られ、7日間郵便局で保管されます。

 不在通知(不在票)に対し何も返答がない場合は、差出人に返送されます。

 ちなみに、通常の書留郵便と同じく、家族でも受け取ることが可能です。

 一度受け取ったら、その後に返却(拒否)することはできません。

 

⑵ 無視し続けると訴訟の可能性

 一度受け取りを拒否した後は、無視された相手がまた内容証明郵便を送ってくるケースがあります。

 これ以外でも、次の手として特定記録郵便や普通郵便で慰謝料請求をされる可能性もあります。

 これらの書類の送付に対し、全て無視し続けるという対応をすることも実際上は可能です。

 しかし、無視を続けていると、相手方が交渉不可能と判断し、最終的には裁判を起こされてしまう可能性があります。

 内容証明郵便が送られてきても、いきなり給与が差し押さえられたりすることはありません。

 しかし、内容証明郵便には、「○月○日までにご返答いただけない場合には、法的手続きを進めることになります。」などの文言が加えられていることがほとんどです。

 つまり、放置していると裁判を起こされてしまう可能性が高まります。

 また、訴訟が提起された場合、裁判所からの書類が届くことになりますが、これも続けて無視してしまうと大変なことになります。

 裁判を欠席すると、ほとんどのケースでは相手方の主張がそのまま認められて判決が下されることになります。

 そうすると、相手方が強制執行の申立てを行うことで、あなたの給与などが差し押さえられてしまう可能性があります。

3 慰謝料請求された場合にするべきこと

 では、差し押さえ等を避けるためにも、慰謝料請求の内容証明郵便を受け取った場合はどのように対応すれば良いのでしょうか。

 

⑴ 内容を確認して相手に連絡する

 内容証明郵便を受け取ったから何かが不利になるということはありません。

 更に、受取拒否や無視を続けることにもほとんど意味がないでしょう。

 受け取らないと、交渉で終われたものでも裁判になってしまう可能性があります。

 内容証明郵便を発送している時点で相手が本気で慰謝料請求をしている可能性は高いので、内容証明郵便の内容を確認するのが適切な対応です。

 慰謝料請求の書面を受け取ったら、内容をみて相手の主張を確認します。仮に事実と違う内容がある場合は反論すべきです。

 不倫慰謝料請求の場合、最初に提示された額が不相当に高いということはよくあります。

 ご自身で支払えないと思う場合や、相手の主張が事実と異なっており反論すべきことがある場合は、それを相手に伝えるべきです。

 内容証明郵便には、必ず差出人である相手の連絡先が書いています。

 差出人が本人である場合は、本人に対し手紙を送るなどで対応します。

 弁護士から内容証明郵便が送られてきている場合は、書かれているメールアドレスや電話番号に連絡してみると良いでしょう。

 なお、内容証明郵便による請求では、返答期限が定められていることがほとんどです。

 返答期限を経過してしまっても、直ちに不利益が生じる訳ではありません。

 しかし、不要な争いを起こさないためにも、期限がある場合はなるべく期限内に連絡するようにしてください。

 

⑵ 減額交渉を提案する

 相手に連絡しなければいけないとしても、何を言えば良いのかわからないという方も多いでしょう。

 慰謝料請求への対応の多くは、慰謝料の減額交渉となります。

 例えば、不倫行為は存在したものの、「1度きりの関係だった」という場合は、減額事由として考慮されます。

 内容証明郵便の内容に、事実と違う期間や回数が書かれている場合は、それを否定してください。

 また、相手が既婚者だと知り得なかったのなら、損害賠償責任は発生していないことになるので、その事実も反論材料となります。

 反論できる事実を集めて、減額交渉を行うのは正当な方法です。

 さらに、一括で支払うことが難しい場合は、分割払いを認めてもらうための交渉なども行うことになるでしょう。

 なお、感情的になり「相手が一方的に悪い」「あなたのことは好きではなかったはず」など、余計なことは言わない・書かないようにしましょう。

 不倫の事実があったのなら、真摯に認め相手に謝罪の言葉を口にすることも大切です。

4 慰謝料請求は無視せずに、弁護士にご相談を

 慰謝料請求の内容証明郵便が届いたら、無視せずに内容を確認することが大切です。

 放置すると裁判を起こされてしまう可能性もあります。

 当事者同士で慰謝料の話合いをしようとすると、どうしても感情的になりがちです。

 そこで、不相当に高い慰謝料額を請求されることもあります。

 そのため、できるだけ弁護士を交えて交渉を進めていくことをおすすめします。

 弁護士がいれば、あなたにとっての不利益が最小限となるように交渉を進めることも可能です。

 慰謝料請求の内容証明郵便が届いたら、早めに弁護士にご相談ください。

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